帯状疱疹(たいじょうほうしん)について
1. 帯状疱疹とは?
帯状疱疹は、水ぼうそうと同じウイルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)によって引き起こされる皮膚の病気です。一度、水ぼうそうにかかって治った後も、ウイルスは背骨に近い神経に潜んでおり、生涯消えることはありません。
• 発症のきっかけ
加齢、疲労、ストレスなどで免疫機能が低下すると、潜んでいたウイルスが再び活動を始め、帯状疱疹として発症します。
• 発症リスク
日本人の成人の90%以上がこのウイルスを保有しています。50歳代から発症率が高くなり、80歳までに約3人に1人が発症すると言われています。
2. 主な症状と合併症
• 症状の特徴
体の左右どちらかの神経に沿って、ピリピリと刺すような痛み、違和感、かゆみを伴う赤い発疹や水ぶくれが帯状に多数現れます。
• 注意すべき合併症
o 目や耳への影響: 顔面に発症した場合、失明などの重篤な症状につながることがあります。
o 帯状疱疹後神経痛: 約10%(50歳以上では約2割)の人に発生し、発疹が治った後も強い痛みが続く後遺症です。
3. 周囲への感染について
「帯状疱疹」という病気そのものが他の人にうつることはありません。しかし、原因は水ぼうそうと同じウイルスであるため、以下の点に注意が必要です。
• 水ぼうそう未経験者へのリスク
水ぼうそうにかかったことのない人(特に乳幼児や予防接種を受けていない子ども)に接触すると、ウイルスがうつり「水ぼうそう」として発症させる可能性があります。発症中は接触を避けるようにしてください。
(水ぶくれの中のウイルスが原因となるため、患部を触らない、タオルを共用しない等の注意が必要です。)
4. 治療について
抗ウイルス薬と、痛みに対する治療が中心となります。発症が疑われる場合は、早急に皮膚科などを受診し、早期治療を行うことが重要です。
5. 予防とワクチン接種
日頃から食事や睡眠などの規則正しい生活習慣を心がけ、適度な運動を行うことで免疫機能を維持することが大切です。また、50歳以上の人はワクチン接種により発症率を下げることができます。
【2025年度からの制度変更について】
2025年度より、65歳の方などを対象とした帯状疱疹ワクチンが、予防接種法に基づく「定期接種」となりました。
国の補助や自治体独自の助成により、自己負担額が軽減される場合があります。詳細は、お住まいの自治体のホームページ等でご確認ください。
ワクチンの比較(目安)
生ワクチン(1回接種) (※定期接種対象外の場合 費用目安 約8,000円)
1年後の効果 6割程度の予防効果
5年後の効果 4割程度の予防効果
10年後の効果 ―
組み換えワクチン(2回接種) (※定期接種対象外の場合 費用目安 計約44,000円)
1年後の効果 9割以上の予防効果
5年後の効果 9割程度の予防効果
10年後の効果 7割程度の予防効果
参考資料
帯状疱疹 MSDマニュアル
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home
帯状疱疹ワクチン 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/shingles/index.html
帯状疱疹 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250602/k10014823181000.html
産業医のコラム
- 2025年11月21日
- 帯状疱疹について
- 2025年11月19日
- 感染性胃腸炎について
- 2025年11月12日
- アルコールについて
- 2025年11月12日
- がん検診について
- 2025年10月08日
- インフルエンザについて
- 2025年09月08日
- 結核・呼吸器感染症について
- 2025年08月27日
- 脳卒中について
- 2025年07月23日
- 夏場の食中毒について
- 2025年07月17日
- 衛生委員会について
- 2025年05月15日
- 五月病について
- 2025年05月07日
- 熱中症について
- 2025年02月05日
- 花粉症について
- 2024年06月27日
- 紫外線について
- 2024年06月15日
- 健康診断後の対応について
- 2024年03月01日
- 在宅勤務におけるメンタルヘルス対策
- 2024年01月07日
- 受動喫煙について
- 2023年04月27日
- 新型コロナウイルス感染時の外出自粛期間について
産業医のコラム
感染性胃腸炎について
感染性胃腸炎について
感染性胃腸炎は、ウイルスや細菌などの病原体が原因で、胃や腸に炎症が起こる病気です。特に秋から冬にかけて流行するウイルス性胃腸炎は、毎年多くの人が発症しており、その主な原因はノロウイルスやロタウイルスです。
どんな症状が出るの?
ノロウイルス:吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、軽い発熱がみられます。小児は嘔吐が多く、成人は下痢が多い傾向があります。症状は1~2日で治まることが多いです。
ロタウイルス:乳幼児に多く見られ、嘔吐や下痢が長引き、発熱やけいれんを起こすこともあります。症状は5~6日続くことがあります。
感染性胃腸炎では、嘔吐や下痢による脱水症状に注意が必要です。特に乳幼児や高齢者は重症化しやすいため、早目に医療機関を受診しましょう。
どうやって感染するの?
食品から感染:ウイルスを蓄積しやすいカキなどの二枚貝を十分に加熱せずに食べると感染します。
人から人への感染:感染者の嘔吐物や便、またはそれらが付着した手や調理器具を介して感染します。
少量のウイルスでも感染するため、家庭や施設で広がりやすいのが特徴です。
治療は?
特効薬はありません。水分補給と安静が基本です。
嘔吐や下痢があるときは、少しずつ水分を摂りましょう(経口補水液がおすすめです)。
脱水症状が強い場合は、医療機関で点滴などの治療を受けましょう。
高齢者は誤嚥による肺炎にも注意が必要です。
予防ポイント
手洗いの徹底:トイレの後や食事の前、調理の前には、石けんと流水でしっかりと手を洗いましょう。
食品の加熱:カキなどの二枚貝は、85~90℃で90秒以上加熱してください。
吐物や便の処理:
手袋とマスクを着用し、ペーパータオルで拭き取ります。
塩素系消毒剤(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒します。
ワクチンはあるの?
ロタウイルス:乳児向けの定期予防接種があります。
ノロウイルス:ワクチンはありません。予防は手洗いと食品の加熱が基本です。
参考資料
「厚生労働省・食中毒の原因(細菌以外)」
http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/03.html
「東京都感染症情報センター・感染性胃腸炎」
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/
アルコールについて
健康的なお酒との付き合い方
お酒は飲み方や量を誤ると、健康や生活に大きな影響を及ぼします。ここでは、最新の知見をもとに、健康的なお酒との付き合い方をご紹介します。
飲酒量と健康リスク
厚生労働省の2024年ガイドラインでは、「飲酒量が少ないほど健康リスクは低い」と明記されています。
・飲酒量が増えるほど、がん、高血圧、脳卒中、心疾患、脂質異常症など生活習慣病のリスクが高まります。
※高血圧、男性の食道がん、女性の出血性脳卒中については、少量の飲酒であっても発症リスクが上昇することが報告されています。また、大腸がんに関しては、1日あたり約20g(週150g程度)以上の飲酒を継続すると、発症の可能性が高まることを示す研究結果があります。
※純アルコール量20gは、日本酒約1合、ビール中びん1本程度に相当します。
飲み過ぎがもたらす健康被害
過度な飲酒は、以下の疾患リスクを高めます。
・肝臓障害(脂肪肝、肝炎、肝硬変、肝がん)
・膵炎、糖尿病、脳卒中
・認知症、うつ病、アルコール依存症
さらに、肥満や高血圧、脂質異常症とも深く関係しており、飲酒量を減らすことで血圧低下や生活習慣病予防が期待できます。
アルコールは脳の報酬系に作用し、依存症を引き起こす危険があります。最初はコントロールできても、次第に難しくなるため注意が必要です。
健康的な飲み方のポイント
• 飲酒量は少ないほど健康リスクが低い
「適量」という概念は廃止されました。できるだけ少なくすることが望ましいです。
• 飲酒しない日を増やす
「休肝日」という表現ではなく、週に複数日、飲酒しない日を設けましょう。
• 食事と一緒にゆっくり飲む
空腹での飲酒は酔いやすくなります。バランスの良い食事と一緒に楽しみましょう。
• 水やノンアルコール飲料と交互に飲む
脱水を防ぎ、摂取量を抑えるために水分補給を心がけましょう。
• 飲み会やストレス時の飲酒に注意
事前に飲む量を決めたり、ノンアルコール飲料に切り替える工夫を。
• 薬との併用や寝酒は避ける
薬の効果に影響し、不眠や体調不良を招くことがあります。睡眠改善には他の方法を探しましょう。
まとめ
飲酒は健康を損なうリスクがあります。自分の体質や健康状態を理解し、飲み過ぎに注意しましょう。もし不安や悩みがある場合は、医療機関や相談窓口に早めに相談してください。
参考資料
厚生労働省「アルコール健康障害対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000176279.html
厚生労働省「健康日本21(第3次)」飲酒に関する指針
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kenkounippon21.html
がん検診について
がん検診は、労働安全衛生法に基づく定期健康診断とは異なり、任意で受診する検査です。主な検査として、大腸がん(便潜血)、胃がん(X線・内視鏡)、肺がん(胸部X線)、乳がん、子宮頸がん検診などがあります。
がん検診を受けるメリット
最大のメリットは、自覚症状がない段階での「早期発見」です。 がんが進行する前に発見・治療ができるほか、子宮頸部異型上皮や大腸ポリープといった「前がん病変(がんになる前の状態)」の段階で対処することで、がんの発症そのものを防ぐ効果も期待できます。
知っておくべき限界とデメリット
がん検診は万能ではなく、以下のような限界やリスクも存在します。これらを正しく理解した上で受診してください。
• 偽陽性(疑いありだが、がんではない) 「要精密検査」と判定されても、詳しく調べるとがんが見つからないケースです。例:令和4年度の胃がん検診では、要精密検査となった人のうち、実際にがんと診断されたのは約1.85%でした。
• 偽陰性(がんの見逃し) がんの位置、形、大きさによっては発見できないことがあり、検査精度は100%ではありません。そのため、1回で安心せず定期的に受診することが重要です。
• 過剰診断 生命に影響しない(進行が極めて遅い)がんを発見することです。本当に治療が必要かどうかの判断は難しく、結果として不要な治療や、それに伴う身体的・心理的・経済的な負担が生じる可能性があります。
• 偶発症(検査に伴うトラブル) 検査に伴う合併症です。胃内視鏡検査では1万人に1人、大腸では1,500人に1人程度の割合で出血や穿孔(穴が開くこと)が報告されており、ごく稀ですが死亡例もあります。その他、バリウムによる誤嚥や腸閉塞、X線検査による被ばくなどが挙げられます。
がんと年齢・自己管理について
日本人の死因第1位は「がん」であり、年間37万人以上が亡くなっています。 20~60代前半の働き盛り世代での死亡割合は約1割ですが、40歳を過ぎると年齢とともにリスクは上昇します。「要精密検査」などの異常を指摘された場合は、放置せずに必ず医療機関を受診してください。
【判定結果の注意点】 「異常なし」という結果は、あくまで「今回の検査では見つからなかった」という意味であり、「病気が全くない」ことの保証ではありません。
食欲不振、体重減少、倦怠感などの自覚症状がある場合は、検診結果にかかわらず速やかに医師に相談してください。(※がん検診は本来、無症状の方を対象としたものです)
参考資料
国立がん研究センター がん情報サービス
https://ganjoho.jp/public/pre_scr/screening/about_scr01.html
インフルエンザについて
インフルエンザについて
厚生労働省より、2025年9月28日にインフルエンザが全国的な流行期に入ったとの発表がありました。今シーズンは感染拡大のペースが早まっているとの報告もあるため、より一層の対策徹底をお願いいたします。
1. インフルエンザの症状 38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛、全身倦怠感などがみられます。小児では急性脳症、高齢者や免疫力が低下している方では肺炎を併発するおそれがあり、一般的な風邪よりも重症化するリスクが高いため注意が必要です。
2. 感染経路と予防のポイント 厚生労働省は、以下の「飛沫感染」と「接触感染」への対策を呼びかけています。
• 飛沫感染対策(咳エチケット)感染者の咳やくしゃみを吸い込むことで感染します。咳・くしゃみが出る際は、マスクやティッシュで口と鼻を覆う「咳エチケット」を徹底してください。マスクは鼻から顎まで隙間なく覆うのが正しい着用方法です。
• 接触感染対策(手洗い・消毒)ウイルスが付着した手で目・口・鼻(粘膜)を触ることで感染します。
o こまめな手洗いを心がけましょう。石けんを使い15秒以上もみ洗いし、流水で十分にすすいでから、水分をしっかり拭き取ります。
o 手洗いがすぐにできない場合は、アルコール手指消毒剤(エタノール濃度60~80%推奨)も有効です。
3. その他の推奨事項
• 健康管理: 免疫力を維持するため、十分な睡眠、バランスの良い食事、適度な水分補給を心がけてください。
• 環境調整: 定期的な室内の換気と、適度な加湿(湿度50~60%目安)が有効です。
• ワクチン接種: 発病予防効果(50~60%程度)や重症化予防効果が報告されています。接種についてもご検討ください。
4. インフルエンザに罹患した場合(出勤停止の目安) 職場内での感染拡大を防ぐため、学校保健安全法の基準に準じ、以下の期間は出勤を控えることを推奨します(※職場で規定がある場合はそれに従ってください)。
【出勤停止期間の目安】 発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで
• 発症日(発熱など)を0日目として数えます。
• 解熱した後、平熱に戻った日の翌日から2日間経過するまで待機してください。
インフルエンザと診断された場合は、医師の指示に従って療養してください。
参考資料
厚生労働省 インフルエンザQ&A
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
東京都感染症情報センター インフルエンザ流行状況
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/flu/flu/
結核・呼吸器感染症について
厚生労働省では、毎年9月24日から30日を「結核・呼吸器感染症予防週間」と定め、結核や呼吸器感染症に関する正しい知識の普及と啓発に取り組んでいます。呼吸器感染症とは、鼻・喉・気管・気管支・肺などの呼吸器に病原体(ウイルスや細菌など)が感染して起こる病気の総称です。風邪のように軽い症状から、インフルエンザ、新型コロナウイルス、百日咳、肺炎、結核のように重症化するものまで幅広く含まれます。
日本は先進国の中で最も結核の罹患率が高く、長らく中程度の流行が続いていました。しかし、2021年には人口10万人あたりの患者数(罹患率)が9.2人となり、初めて10人を下回ったことで「結核低蔓延国」に分類されました。それでもなお、2021年の時点で職場・学校・医療機関・高齢者施設などでは集団感染が発生しており、年間で11,519人が新たに発病し、1,845人が亡くなっています。世界では年間1080万人(2023年、WHO推計)が新たに発病し、年間125万人がなくなっており、結核は過去の病気ではなく、現在も重大な感染症のひとつです。
結核菌に感染しても、90〜95%の人は一生発病することなく経過します。しかし、残りの5〜10%では菌が増殖し、「活動性結核」を発症します。感染直後は咳や痰もなく周囲にうつすことはほとんどありませんが、感染から半年〜2年ほど経って咳が出始め、周囲への感染が続くようになります。診断が遅れると、数年間にわたり、職場、学校などで感染を広げてしまうこともあります。
結核を早期に発見するためには、年1回の定期健康診断(胸部レントゲン検査)が大切です。胸部レントゲンで異常が見つかった場合は、必ず呼吸器内科で精密検査を受けてください。結核に特有の症状はありませんが、咳・痰・全身倦怠感・発熱・体重減少などの全身症状が現れることがあります。咳や微熱などの症状が2週間以上続く場合は、必ず呼吸器内科を受診するようにしましょう。
参考資料
公益財団法人結核予防会「結核について」
https://www.jatahq.org/about_tb/
脳卒中について
夏場は汗をかきやすく、脱水状態になりやすいため、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まります。脱水によって血液が固まりやすくなり、血管が詰まりやすくなるからです。サウナや運動による発汗で脱水状態になり、若い人にも脳梗塞が起こることがあります。スポーツや外出など汗を多くかきそうなときは、こまめな水分補給を心がけましょう。
脳卒中(脳梗塞・くも膜下出血・脳出血)は死亡率が高いだけでなく、体の麻痺、言語障害、記憶障害などの重い後遺症が残りやすい病気です。次のような症状が一つでも出たら、脳卒中を疑い、ただちに医療機関を受診してください。
1. 顔や手足の片側に突然のしびれや脱力が出る
2. 視力が急に低下する、片目が見えなくなる
3. 言葉が出ない、会話が理解できない
4. 突然の激しい頭痛
5. 急なめまい、ふらつき、転倒(他の症状を伴うことが多い)
脳卒中は「発症した時間」が治療法の選択に直結します。症状が出た時刻をできるだけ正確に記録してください。また、症状が悪化すると自分で状況を説明できなくなることがあるため、受診の際は必ず家族や同僚が付き添うようにしましょう。
脳卒中を起こしやすくする危険因子には、高血圧、糖尿病、脂質異常症、不整脈、心臓弁膜症などがあります。また、過去に脳卒中を起こした方や、家族に若くして脳卒中になった人がいる場合は注意が必要です。健康診断で高血圧や高血糖、脂質異常が見つかったら、必ず治療を受けて管理しましょう。
予防や早期発見には「脳ドック」も有効です。脳ドックは頭部MRIなどで脳血管の異常を調べ、脳卒中の原因となる動脈の奇形や動脈瘤などを見つけることができます。健康保険は使えませんが、日本脳ドック学会は45歳以上の方や、家族に脳卒中の既往がある方、高血圧・糖尿病・脂質異常・肥満・喫煙習慣のある方に受診を勧めています。
一方で、頭痛などの症状がある場合は、健康保険の対象となる診療が受けられますので、かかりつけ医や脳神経外科、脳神経内科にご相談ください。
参考資料
日本脳ドック学会 「脳ドックとは」
https://jbds.jp/brain-dock/index.html#p_a
夏場の食中毒について
暑い時期は細菌の増殖しやすい環境です。特に夏場は黄色ブドウ球菌による食中毒に注意が必要です。黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や傷口に存在している細菌です。感染することは、通常、問題になりませんが、暑い日の室温下で菌の増殖と同時に毒素(エンテロトキシン)を出し、この毒素が食中毒の原因になります。毒素を含んだ食品を摂取後、約30分~3時間程度で、激しい嘔吐、下痢、腹痛などの症状がみられます。
この毒素は100度で30分加熱しても冷凍しても無毒化されません。細菌を付着させない「手洗いをしっかり行う。食品は素手で触らないようにする。(おにぎりは要注意です。ラップ、ビニール手袋を使用してください。)」、増殖させない「冷蔵庫を利用して細菌が増殖しにくい10度以下に保つ。お弁当は保冷パックで持ち運ぶようにする。」ことが重要です。
参考資料
「食品衛生の窓」東京都福祉保健局
http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/oushoku.html
「食中毒」厚生労働省
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/
衛生委員会について
衛生委員会とは
労働安全衛生法で、50人以上の事業場について、労働衛生に関する一定の事項について調査審議させて、労働者が事業者に対し意見を述べることができるように、衛生委員会の設置が義務付けられています。また、毎月少なくとも1回衛生委員会を開催する必要があります。(労働者自身がその事業場の安全衛生の問題について関心をもつことも重要です。)
衛生委員会の構成
委員長(議長)
使用者側委員 衛生管理者、産業医、労働者で衛生に関する経験を有する者
労働者側委員 労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名した労働者
※議長となる委員以外の委員の半数は、労働者の過半数を代表する者の推薦に基づき指名しなければならないこととなっています。
衛生委員会の調査審議事項
① 労働者の健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること
例)長時間労働の状況把握
② 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
例)健康診断の受診率の確認、ストレスチェックの実施計画の作成
③ 労働災害の原因及び再発防止対策で、衛生に係るものに関すること
例)労災事故の状況確認
④ その他労働者の健康障害の防止及び健康の保持増進に関する重要事項
例)季節特有の健康問題(熱中症、感染症、食中毒)についての周知
五月病について
五月病とは、特に5月の連休後に発症しやすい心身の不調を指します。4月の就職、異動、昇進、転居などで新しい環境に適応する際に感じるストレスが誘引となり、意欲の低下、食欲の低下、不眠、気分の落ち込みなどみられます。業務の集中力低下や勤怠不良がみられることもあり、休職や退職につながることもあります。
五月病は、医学的に正式な病名ではありません。医学的な診断としては、適応障害、うつ状態、うつ病などに該当する可能性があります。几帳面で責任感が強い人、環境変化に馴染むのが難しい人が発症しやすいと言われています。
予防策としては、趣味や運動を積極的に取り入れること、同じ状況にいる人々との交流、規則正しい生活リズムの維持などが効果的です。
精神的な症状が2週間以上続いて、業務や日常生活に支障がある場合は精神科・心療内科の診察を受けることをおすすめします。(精神科と心療内科には明確な区別はありませんので、どちらの科を受診しても大丈夫です。)食欲の低下や身体的な不調がある場合は、まずは、内科などのかかりつけの医師の診察を受けましょう。身体的な病気が除外されても体調不良の原因が分からなかった場合は、五月病のような精神的な病気の可能性がありますので、精神科・心療内科の受診も検討してください。
参考資料
「「五月病」かも… 注意すべきポイントは?」NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250512/k10014803331000.html
「それ、五月病かもしれません!」済生会病院
https://www.saiseikai.or.jp/medical/column/may_blues/
熱中症について
労働安全衛生法改正により、2025年6月1日から、WBGT(暑さ指数)28度以上又は気温31度以上の環境下で連続1時間以上又は1日4時間を超えて実施が見込まれる作業では、職場が熱中症のおそれがある労働者を早期に見つけ、その状況に応じ、迅速かつ適切に対処することにより、熱中症の重篤化を防止するため、「体制整備」「手順作成」「関係者への周知」が事業者に義務付けられます。具体的には、熱中症の自覚症状やそのおそれがある人を見つけた場合などに報告するための連絡先や担当者をあらかじめ定め、体を冷やして医療機関に搬送するといった手順を決めて、働く人への周知を求めています。対象となる作業がある場合は、厚生労働省「職場における熱中症予防情報」のホームページを確認してください。
https://neccyusho.mhlw.go.jp/
「手足がつる。立ちくらみ・めまい。吐き気。汗のかき方がおかしい。なんとなく体調が悪い。すぐに疲れる。イライラしている。フラフラしている。呼びかけに反応しない。ボーとしている。」などいつもと違うと思ったら、熱中症を疑い、すぐに周囲の人や現場管理者に申し出るようにしてください。直ちに作業中止し、119番に連絡してください。救急車が到着するまで作業着を脱がせ水をかけて全身を急速冷却してください。(熱中症応急手当カード「携帯用」参照)
意識がはっきりして、自力でしっかりと歩行できて、自力での水分摂取(経口補水液、スポーツドリンク)ができる場合でも、一人にしないで身体冷却を行いながら、十分に経過観察を行って、異常があれば直ちに119番してください。(一時的に回復しても体調が急変して症状が悪化することもあります。)
熱中症は夏の猛暑日だけでなく、身体が暑さに慣れていない5月にも起こります。気温が28度を超える時には熱中症に注意し、特に気温が35度を超えるときには屋外での活動を原則控えるなどの対策を取ってください。
熱中症では、体温の上昇、脱水等で脳を始めとする重要な臓器に血液が供給できなくなり、命の危険のある病気ですので、暑さを避けて、こまめに水分することを心がけて、今年の夏も十分に注意してください。
熱中症予防のためのポイント
(1)3食の食事をきちんと食べる。
(2)のどが渇かなくても定期的に水分を摂取する。
(3)定期的に休憩を取る。
(4)空調設備がある場合は、温度を調整し、実際の室温が28度を超えないようにする。
(5)快適な環境でよく睡眠をとる。(疲労も熱中症リスクになります。)
(6)スポーツドリンク、経口補水液を常備しておく。(汗を大量にかいた時は経口補水液が適しています。)
参考資料
「職場における熱中症予防情報」厚生労働省
https://neccyusho.mhlw.go.jp/
「熱中症予防のための情報・資料サイト」厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/nettyuu/nettyuu_taisaku/
「熱中症予防情報サイト」環境省
https://www.wbgt.env.go.jp/
「熱中症からカラダを守ろう」大塚製薬
http://www.otsuka.co.jp/health_illness/heatdisorder/
花粉症について
2025年春のシーズンは、スギ花粉の飛散が関東地方で2月上旬に始まる予想です。今年の関東甲信地方のスギやヒノキの花粉量の予測は、例年比130%とやや多く、前シーズン比160%と多いと見込まれています。
花粉症は、鼻や目などの粘膜に花粉が接触することによって引き起こされるアレルギー反応で、くしゃみ、鼻汁、鼻づまり、目のかゆみなどの症状がみられます。
対策は花粉の接触を防ぐことが基本になります。花粉情報に注意して飛散の多い時は、外出を控える、外出時にマスク、メガネを使う、花粉が付着しやすい衣服を避けて、帰宅時、衣服や髪をよく払ってから入室する、洗顔、うがいをするなどの対策を取りましょう。
天候、気温、風向きによって、花粉の飛散量は多く変わりますので、花粉情報サイトを確認しながら、花粉の飛散量が多い日には十分に注意してください。
参考資料
環境省花粉情報サイト
http://www.env.go.jp/chemi/anzen/kafun/
日本気象協会
https://www.jwa.or.jp/news/2025/01/25128/
紫外線について
紫外線に対する関心は日本でも少しずつ高まってきています。オゾン層破壊による紫外線増加といった環境問題としての関心だけでなく、紫外線の浴びすぎによる健康への影響についても同様です。
紫外線の浴びすぎは、日焼け、しわ、シミ等の原因となるだけでなく、長年紫外線を浴び続けていると、時には良性、悪性の腫瘍や白内障等を引き起こすことがあります。しかし、紫外線は悪い影響ばかりではなく、カルシウム代謝に重要な役割を果たすビタミンDを皮膚で合成する手助けもします。
紫外線の影響は、地域や個人によって異なりますが、紫外線の影響が強いと考えられる場合には、状況に応じて、次のような対策を行うことが効果的です。
<対策>
①紫外線の強い時間帯を避ける。
②日陰を利用する。
③日傘を使う、帽子をかぶる。
④衣服で覆う。
⑤サングラスをかける。
⑥日焼け止めを上手に使う。
最適な紫外線量には個人差がありますが、正しい知識を持ち、紫外線の浴びすぎに注意しながら上手に紫外線とつきあっていくことが大切です。
参考文献
「紫外線環境保健マニュアル2020」環境省
https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf
健康診断後の対応について
健康診断について
健康診断は、労働安全衛生法で事業者と労働者ともに実施義務が課されており、実施状況を労働基準監督署に報告する必要があります。健康を保持することは、労働者の皆さんにとっても重要なことですので、健康診断を受診してください。 また、健康診断で要精密検査・要治療等と判定された方は、医療機関を受診してください。既に通院中の方は健康診断の結果を持参して担当医にご相談ください。その際に、担当医に就業制限(時間外労働の制限、交代勤務禁止、自動車の運転禁止等)の有無を確認し、就業制限の指示があった方、勤務に際して健康上の配慮を必要とする方は、必ず事業所に報告してください。 労働安全衛生法に基づいて、産業医の就業区分判定(通常勤務、就業制限、休業)等の意見を踏まえて、事業所が就業措置を決定します。
健康診断後の対応について
毎年の健康診断でいつも異常を指摘されるので慣れてしまい医療機関に受診されない方もいるかもしれません。
脂質異常(LDLコレステロール180mg/dl以上、中性脂肪500mg/dl以上)、高血圧(収縮期血圧160mmHg以上、又は拡張期血圧100mmHg以上)、高血糖(HbA1c6.5mg/dl以上)のいずれかに該当する方は、厚生労働省の「標準的な健診保健指導プログラム」の基準では、脳卒中と心筋梗塞及び狭心症のリスクが特に高く、早期に医療機関を受診する必要があります。こちらの基準に該当しなくても、脂質異常、高血圧、高血糖はリスクを高めますので、これらの項目で要精密検査・要治療等と判定された方は、医療機関を受診してください。既に通院中の方は健康診断の結果を持参して担当医にご相談ください。
厚生労働省 生活習慣病を知ろう https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/disease/ ご参照ください。
胸部レントゲン検査で要精密検査・要治療等と判定された方は結核等の早期発見のために呼吸器内科を受診してください。
心電図異常、肝機能検査異常、貧血、その他検査項目の異常でも重大な病気が潜んでいる可能性があるため、要精密検査・要治療等と判定された方は医療機関を受診してください。
法令で定められた項目以外(大腸がん検診(便潜血検査)、胃がん検診(胃部レントゲン)、婦人科検診、その他各種がん検診、感染症検査など)で異常を指摘された方は、がんなどの疾病の早期発見の機会を逃さないように自ら医療機関を受診してください。
健康診断、がん検診は、自覚症状がない方を対象としています。健康診断・がん検診・人間ドックで異常を指摘されなかった方でも、「今回の検査で発見できるような異常はなかった」とは言えますが、「どこにも病気がない」ことを保証するものではありません。何らかの不調や体重減少、「食欲が低下する。体重の減少が続く。倦怠感が続く。」といった症状がありましたら、医療機関を受診して自ら健康管理を心がけましょう。
在宅勤務におけるメンタルヘルス対策
在宅勤務では、生活リズムが乱れやすくなり、メンタルヘルスを保つために必要な日常生活のバランスを崩してしまう危険性が高まります。健康を保つ上で重要な脳のメカニズムの一つが、「体内時計」と呼ばれるものです。この体内時計が乱れると、不眠や食欲低下、気分の落ち込みなど、心身の不調をきたしてしまうことが多いといわれています。体内時計を正確に作動させるよう努めることが大切です。ここでは、医学的根拠に基づき、規則的な日常生活を送るためのポイントを5つご紹介します。
1:毎日、同じ時間に起床しましょう。
睡眠リズムを整えることは、体内時計を安定させるために最も大切です。自分自身の生活に合った時間で構いません。一貫して毎日、同じ時間に起床することが重要です。同じ時間に起床することで、同じ時間に入眠できるようになります。
2:ルーティーンを作って行動しましょう。
在宅での仕事や作業、食事の時間など、日々の活動は時間を決めて行いましょう。体を動かすような日課を作ることも大切です。
3:日の光を浴びましょう。
外出できない場合は、窓とカーテンを開けた窓際などで、ゆったりと心を落ち着ける時間を作りましょう。必ずしも直射日光を浴びる必要はありません。体内時計を安定させるためにも、目から光を取り込むことが大切です。
4:人と交流する機会を作りましょう。
人と気持ちや考えを分かち合うことは重要です。対面でなくとも、テレビ電話などの画面を通して、リアルタイムでやりとりができるツールを使って、人との交流の機会を作るよう心がけましょう。
5:長時間の昼寝や、夜間にブルーライトを浴びることは避けましょう。
もし、昼寝をする場合は、15時までに、30分以内に留めておきましょう。また、できるだけ就寝前には、スマートフォンやコンピューターの明るい光を浴びないようにしましょう。これらの行動は夜の睡眠の質を低下させ、睡眠リズムの乱れにつながります。
参考資料
日本うつ病学会「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行下における、こころの健康維持のコツ:先の見えない中であっても、日常の生活リズムには気をつけよう」
https://www.secretariat.ne.jp/jsmd/2020-04-07-2-covid-19.pdf
受動喫煙について
受動喫煙とは、室内などで他人のたばこの煙を吸わされることをいいます。タバコの先から出る煙(副流煙)は、喫煙者が吸い込む煙(主流煙)よりも、ニコチンが2.8倍、タールが3.4倍、一酸化炭素が4.7倍、さらに発がん性のある化学物質も多く含まれています。
受動喫煙によって引き起こされる体の害として、肺がん、急性心筋梗塞などの虚血性心疾患、乳幼児突然死症候群、子供の呼吸器感染症、喘息発作の誘発があげられ、子供への影響が大きいといわれています。また、厚生労働省の研究班「今後のタバコ対策の推進に関する研究」では、年間約6,800人が受動喫煙により、肺がんと虚血性心疾患で死亡していると推計しています。
新型タバコは、従来の燃焼式タバコに比べてタール(タバコ煙中の有害物質のうちの粒子成分)が削減されていますが、依存性物質であるニコチンやその他の有害物質を吸引する製品です。従って、使用者にとっても、受動喫煙させられる人にとっても、非燃焼・加熱式タバコや電子タバコの使用は推奨できません。
健康増進法が改正されて、一般のオフィス・事業所では原則屋内禁煙(基準を満たした喫煙専用室のみ喫煙可)となります。喫煙者の方は、今後も受動喫煙防止に十分な配慮をするようにお願いいたします。
参考資料
厚生労働省 なくそう受動喫煙
https://jyudokitsuen.mhlw.go.jp/
新型コロナウイルス感染時の外出自粛期間について
新型コロナウイルスの対応について
新型コロナウイルスに感染した際の療養期間は、2023年5月8日に感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げになりました。感染症法に基づく感染者及び濃厚接触者の外出自粛、就業制限が求められなくなりますが、厚生労働省は、自主的な判断の参考にしてもらうための目安となる考え方を示しています。
(1)新型コロナウイルスに感染した場合
・発症の翌日から数えて5日間が経過し、かつ、解熱および症状軽快から24時間経過するまでは外出を控える。
・発症後10日間が経過するまでは、マスクの着用等、周りの方へうつさないよう配慮する。
(2)家族、同居者が新型コロナにかかった場合
・部屋を分けて世話する人をできるだけ限定する。
・その上で、患者の発症日を0日とし、5日目までは自身で体調の変化に注意する。7日目までは発症可能性があるため、期間中は手指衛生、換気等の基本的な感染対策、マスク着用や高齢者等のハイリスク者との接触を控える等の配慮を行う。もし症状が見られた場合には、感染した場合と同様の対応を検討する。
参考資料
厚生労働省 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について
https://www.mhlw.go.jp/stf/corona5rui.html